
7A病棟で活躍する老人看護専門看護師の富田師長と、長年一緒に働いている2人の副師長さんたちで座談会を行いました。
専門看護師とは
専門看護師は、複雑で解決困難な看護上の課題を抱える患者さんやご家族に対して、高い水準の看護を行う看護職です。その役割は「実践」「相談」「教育」「調整」「倫理調整」「研究」の6つにわたります。
老人看護へのきっかけは
『もっと、できることがあるのでは』

学位は持っていましたが、修士号を取りたいと思っていました。
大学院に通うなら、学びを活かしたいと考え、専門看護師資格も同時に取得することを目指しました。
老人看護を選んだのは病棟での経験がきっかけ。高齢の方が心不全で苦しみながら亡くなられる姿を見て、“もっと、できることがあるのでは”と感じました。最期の時間に、何か支えになれるケアをしたいと思ったんです。
帰る日の、あの嬉しそうな笑顔は忘れられません

入退院を繰り返していた九十代後半の患者さんがいてね。
『家に帰って卵かけご飯を食べたい』といつも話していました。
ご家族と在宅チームと相談し、何とか退院してご自宅へ帰ることがきました。
帰る日の、あの嬉しそうな笑顔は忘れられません。
ただね、すぐにその後お亡くなりになって。
でもね、後日、ご家族から『卵かけご飯、食べましたよ』と聞いたときは、本人の希望もかない、良かったなと思いました。

お家で卵かけごはんを、食べられて良かった。
急性期病院ならではの難しさも。
だからこそ『想いを聞く』ことを大切にしています

一方で、急性期病院ならではの難しさも感じています。急性期病院なので、治療が優先されるのは当然なのですが、その人のこれまでの生活や、大切にしていることをもっとケアに反映したい。でも、現実には難しい場面も多い。
身体拘束が必要になることもあり、患者さんの意向と異なることも。
だからこそ、『想いを聞く』ことを大切にしています。
たとえ意向が通らなくても、話すことで患者さんが少しでも心を軽くできるように、折衷案を一緒に探していきます。

忙しい病棟の中でも、師長はいつも
「患者さんではなく、一人の人としてどう向き合うか?」と私たちに問いかけてくれます。
師長が答えを出すのではなく、スタッフ自身に考えさせてくれる、その姿勢が、とても印象的です。
一日一回は患者さんが『心地よかったな』と思える時間を持ってほしい

入院中の方に、日々のケア(清拭・洗髪・口腔ケアなど)を丁寧に行える体制をつくりたいですね。
治療優先でつらいことが多い入院生活でも、一日一回は患者さんが『心地よかったな』と思える時間を持ってほしい。『背中に温かいタオルを当ててもらって気持ちよかった』『足浴で温泉のもとを入れてくれてうれしかった』
そんな体験が、たとえ最期の時間になっても心に残ると思うんです。
認知症の方も言葉がなくなっても、快・不快の感情は最後まで残る。その感覚を大事にしたいです。

ふと、富田師長の姿が見えないと思うと、患者さんとお話しながら手浴をしてあげていたり。いつもラウンドして、患者さんの声に耳を傾けています。


認定看護師を目指すきっかけをくださったのは富田師長なんです。
副師長会の懇親会で、師長が『みんな聞いて~!(私の名前)さん認定学校行くって~! 』って勝手に宣言しちゃいまして(笑)。でも、そのひと言で腹をくくりました。

言っちゃえば、やるかなぁって(笑)

でも、そこからずっと支えてもらっています。
認知症ケアチームの立ち上げも一緒に取り組みました。私はつい深く入り込みすぎてしまうこともありますが、『一歩引いて全体を見て』とアドバイスをもらってからは、チーム全体を意識できるようになりました。また、組織の中での動き方も学んでいます

特定の人に頼る体制ではなく、病棟全体で同じケアができるようにするのが大切。
この人がいないと回らない、とかだと困りますからね。

富田師長から、管理の仕方を間近で学ばせてもらっています。
これからもよろしくお願いします。