
整形外科は2025年度、脊椎手術を年間1000件達成しました。
この記念すべき節目について、副院長 / 整形外科 主任部長 新井嘉容先生にこれまでの歩みと今後の展望を伺いました。
年間1000件達成、率直なお気持ちは?
ほっとした感じかな。
13年前の着任当初、年間手術数は660件ほど。
病棟や手術室のスケジュールを見て「この病院は1000件いける」と思いました。
何年かかるかわからないけど、とにかく行くぞ!と目標を立てて、それに後輩たちが呼応してくれて、みんなでそこにむけてやってきた感じです。私は本当に多くの仲間に恵まれています。

なぜ1000件にこだわりが?
九段坂病院は、東京医科歯科大学(現在は、東京工業大学と統合して東京科学大学)脊椎班の中心的な施設であり、そこで年間1000件の手術が行われてきた実績が、この目標の背景にあります。多くの医師が同施設で研鑽を積み、脊椎外科の道に進んでおり、そうした環境で達成された1000件という実績は、自分たちにとって大きな目標でした。
今回の達成は、私が着任してからの取り組みだけでなく、これまでの長い歴史の積み重ねの上に成り立っているものです。前副院長をはじめとする諸先生方が、当院を脊椎診療の中核とする方針のもと、さまざまな課題を乗り越えながら診療体制を築いてこられました。その歩みを受け継ぎ、自分もその一端を担いたいという思いで取り組んできました。
今回、年間1000件を達成したことで、一つの形として残すことができたと感じています。
また、九段坂病院の病院長に、先生に続き、自分たちも1000件達成したことを報告したら、すごく喜んでくれて、すごく嬉しかったです。同時に、「これを継続していくことが重要であり、容易ではない」とのお言葉もいただいています。

この12年で印象に残っていることは?
やっぱり時代とともに、手術を受ける患者さんも変わってきています。
現在は超高齢社会でもあり、私が医師になった頃と比べても、手術を受ける患者さんの年齢層は確実に高くなっています。当然、患者さんの体力面も変化しています。だからこそ、少しでも安全に、出血や侵襲を抑えた手術を行う努力が必要だと考えています。
一方で、医学は大きく進歩しています。
以前であれば治療をあきらめざるを得なかった方が、外科的治療を受けられるようになったことは、とても良いことです。
ただ、その分、患者さんにとっても、周りのスタッフにとっても大変な面はあります。手術そのものだけではなく、術後の病棟管理までを含め、多職種のスタッフが本当に頑張ってくれていて、その支えによって現在の医療体制が成り立っていると感じています。
特に当院は全国的にも頚椎手術が多く、一般的には後方からの手術が多い中で、実際には前方からのアプローチの方が理にかなっている患者さんもたくさんいます。大学が掲げてきた「理にかなった手術を頑張ってやろう」という考え方を、ここでも実践しています。
また、術後ケアでは、危険な事態を避けるために、術前・術中の細かな操作から、術後に注意すべきポイントまで、経験に基づいた実践を積み重ねてきました。
手術をするだけではなく、それに付随する多くの対策を、みんなが一緒に頑張ってきたことが大きいですね。
脊椎外科はまだまだ発展途上の分野なので、みんなでカンファレンスやディスカッションを重ねながら、より良い医療を目指しています。

今後の目標を教えてください
1000件を記念にしないで、1000件を当然に。
それを下回ったらもっとしっかりしないとね、といった体制にならないといけないと思っています。
ありがたいことにスタッフも集まってくれていて、周囲の理解も得られている恵まれた環境なので、それに甘んじることなく、当たり前にしていきたいです。
後進育成に関する思いをお聞かせください
「三つ子の魂百まで」
若いうちにさまざまなことを吸収してほしいと思います。
私自身、医師になって3年目に、九段坂病院に勤務していた際、先輩方に徹底的に指導していただいたこと、そしてその教えを、自らトレーニングしたことが、今の自分の基盤になっていると感じます。
若いうちに身につけたこと、指導医を取得するまでに積み重ねた経験は、その後の医師人生に大きく影響します。
時間が経ってからでも遅いわけではありませんが、「鉄は熱いうちに打て」という言葉のとおり、比較的時間に余裕のある時期に、技術を磨き、知識を深め、論文を読み、自身の診療を振り返って発表したり、そういうことに時間を費やしてほしいと思います。
年齢を重ねると、意欲があっても時間の確保が難しくなったり、思うように動けなくなったりすることもあります。だからこそ、若いうちに一生懸命吸収してほしいです。
また、脊椎外科はまだ発展途上の分野です。現在の治療をしっかり身につけ、先輩の技術を学ぶことはもちろん大切ですが、それに加えて「どうすればもっと良くできるか」と考える柔軟な発想を持ち、工夫を重ねていくことで、医療はさらに良い方向へ進んでいくと期待しています。
