患者さんの『食べる』を支える

脳卒中によって身体機能の低下や、病気によって口から食べることが難しくなった患者さん。
一人ひとりの状態や思いに寄り添い、その人らしい生活を支援。

目指した理由

私の場合は、祖母が私のことを看護師にしたいと思っていて、小さい頃から「お前は看護師になれ」と言われていました。
大きくなってから自分自身も、資格のある職業で、長く続けられる職業に就きたいと思い、看護師を選びました。

私は4歳くらいの頃に、長く入院した経験があります。
そのときのつらかった思いがきっかけとなり、「自分が看護師になって、そのつらさを分かってあげられる、寄り添える存在になりたい」と思うようになりました。

印象に残った事例

脳卒中は軽症から重症までさまざまで、発症後4時間半以内であれば、血栓を溶かす治療ができる場合があります。

ある患者さんは、その治療で一度は歩けるまで回復しましたが、その後、脳内で出血し、意識を失ってしまいました。ご家族は「寝たきりになるかもしれない」と説明を受けたうえで、治療を選択されました。
その後、患者さんは少しずつ回復し、起き上がったり、トイレに行ったり、経管栄養から口で食事ができるまでになりました。リハビリ病院へ転院された後、外来受診の際に病棟へサプライズで寄ってくださったんです。

普段は車いすで移動されているそうですが、ナースステーションの直前で車いすを降り、歩いて会いに来てくださった姿は、今でも忘れられません。

患者さん自身の回復する力に加え、ご家族が毎日声をかけ、一緒に散歩するなど熱心に支えてくださったことも大きかったと思います。
「こんなによくなるんだ」
と改めて実感し、患者さんの回復を支える仕事の大切さを感じ、また頑張ろうと思えた出来事でした。

私は、患者さんから怒られた経験のほうが印象に残っています。
急性期病院には、昨日まで普通に食べられていた方も多く入院されます。
そのため、「食べられない」という医師の診断をなかなか受け入れられない患者さんに、どう説明し、納得していただくか、難しさを感じることがあります。
一方で、経管栄養だった患者さんが再び口から食べられるようになり、表情まで明るくなって会いに来てくださることもあります。そんな姿を見るたびに、本当にうれしくなります。

口から食べられることは栄養になるだけでなく、噛むことによる刺激が覚醒につながり、日常生活を取り戻す大きな力にもなると感じています。

やりがいはどんな時に感じる?

私が脳卒中認定看護師の資格を取得して脳外科病棟に戻った頃、当時の院長先生の紹介で、嚥下の先生方が週に一度来てくださるようになりました。
それまでは「食べること」への支援も手探りでしたが、評価やリハビリを通して多くの知識を得ることができました。
そうした取り組みが10年ほどかけて院内に広がり、今では口腔ケアや「食べること」について、看護師だけでなく多職種で考える文化が根付いてきたことに、大きなやりがいを感じています。

一番関わることが多いのは、言語聴覚士(ST)です。
嚥下チームも立ち上げ当初は一人でしたが、今では5人ほどに増えました。
認定看護師を目指した理由の一つは、人と話すことや人前で話すことが苦手だった自分を変えたかったからです。
多職種と連携する中で、コミュニケーションが少しずつ楽しくなりました。
以前は言葉にせず後輩に教えていたこともありましたが、今では「言葉で伝える」ことを意識するようになりました。

院内で活動を始めた頃は、他病棟のスタッフも身構えてしまい、私が行くと怒られると思われ、避けられることもありました。
でも、注意をするだけではなく、「先週よりきれいになっていましたね」と、少しずつ良くなったところを褒めるようにしたんです。
すると、「この患者さんの口の中も見てください」と声をかけてもらえるようになりました。
相手を認めながら関わることが、チーム医療には大切だと感じています。

お願いするだけではなく、相手を認めることが大切ですよね。
だからこそ、伝え方はいつも意識しています。

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