
痛みの先にある、その人らしさを支える
今回は、緩和ケアチームの専従看護師として、がん患者さんの疼痛ケアに携わる“がん性疼痛看護認定看護師”に、日々の仕事や看護への思いを聞きました。
「痛い」の背景にあるものを探す
がん患者さんの苦痛は、身体的なものだけでなく、精神的・社会的・スピリチュアルな苦痛を含む「全人的苦痛」といわれています。
私は、身体的な痛みを切り口に、「この患者さんが痛いと感じている背景には、どんな不安や苦痛があるんだろう」と掘り下げて、苦痛を和らげる糸口を見つけるような、そんな看護を主体としています。
緩和ケアチームの専従看護師として、病棟や外来の看護師、医師から依頼を受け、患者さんのもとへ伺うことが多いです。一日に関わる患者さんは、多いときで五人ほど。担当した患者さんを継続して見ながら、新たな相談にも対応しています。
人数だけを見ると少なく感じるかもしれませんが、一人ひとりにかける時間が長いので、割と濃密な一日を過ごしています。

痛みは、我慢しなくていい
痛みは本人にしか分からないものです。
だからこそ、患者さんの言葉を大切にしています。医療者間で痛みの程度を客観的にとらえる方法として、0から10までの11段階で評価する方法も使っています。
以前は、医療用麻薬に対して「使うと死期が早まるのでは」と不安を抱く患者さんも少なくありませんでした。年配の患者さんには、痛みを我慢することが大切だと考えている方も多かったように感じます。
一方、現在では医療用麻薬についての理解も広がり、「すぐに使ってほしい」と希望される患者さんも増えました。時代の変化を感じます。
私は、患者さんに「痛みは我慢するべきではない」ということを率直に伝えています。痛みを我慢し続けることは、血圧の上昇など、身体への影響だけでなく、心にも負担がかかりますから。
―― 痛みは完全に取り除ける?
完全に痛みを0にすることは難しい場面もあります。
「絶対に痛みが取れますよ」とは、絶対に言ってはなりません。
ただ、患者さんは不安だと思うんです。だからこそ「痛みは0にはならないかもしれないけれど、できる限り今ある苦痛を取るようにします」そう伝えながら、少しずつ痛みを和らげ、患者さん自身が「良くなった」と体感していただけることを心がけています。

「ありがとう」より、患者さんの変化を見る
患者さんから「ありがとう」と直接言われることは、実はあまりないんです(笑)。
痛みが和らぐと、患者さんの目標も高くなっていきます。最初の目標が達成できたら、次の目標へ向かっていて、そのときの希望に合わせて、疼痛管理も再構築をしていきます。
言葉で良くなったよと言われるより、表情や、それぞれの目標を伺って、良くなったことを感じています。
車椅子だった患者さんが、歩いて外来に来られるようになった姿を見たり。先日も、社会復帰して元気になった患者さんが、ふっくらと元気な姿で外来に来られて、「がんは克服したけど、他の病気にならないように気を付けてね」と声を掛けました。緩和医療に携わる私たちにとっての「希望」だなと思うと共に、そんな瞬間が、幸せだなと感じます。
この道に進んだきっかけ
私が、がん性疼痛看護の道に進もうと思ったのは、ある患者さんとの出会いがきっかけでした。
その患者さんは、膀胱がんが脊椎に転移し、強い痛みに苦しんでいました。しかし、医師から医療用麻薬を勧められても、「絶対に嫌だ」と拒んでいたんです。
当時は今ほど医療用麻薬への理解が広がっておらず、「使ったら死んでしまう」という不安を抱えていたのだと思います。患者さんは、痛さで、本当に苦しくつらそうたったのに、私は何もできませんでした。
その末に亡くなられた姿を目の当たりにして。
その時、患者さんに納得していただける説明をして、痛みを取りたいと思ったんです。それが、この道に進むきっかけです。
当時は、がん患者さんと関わった経験もほとんどありませんでした。自分で専門書を一冊買って、独学で勉強しました。夜勤もしながら、休みの日には五~六時間。受験前の三か月はびっちり勉強しました。
私、計画的に長く勉強するのが苦手なので、短期集中で、ぐっと頭に入れました(笑) 。
患者さんの道を、後ろから照らす
認定看護師を目指したとき、自分の看護について考えたことがありました。
「患者さんにとって、太陽みたいな存在でいたい」と思ったんです。
前から照らすと強いので、後ろから明るく、その人の道を照らす。患者さんが道に迷わず、自分の力で進んでいけるようにする。それが私の看護なのかなと思っています。
認定看護師になろうと思った二十年前から、その思いは変わっていません。

次の世代へ、経験をつなぐ
今は、認定看護師の仕事を学ぶ「シャドーイング研修」に参加する後輩たちとも一緒に活動しています。私がこれまで経験してきたことを伝えて、この道に進みたいという「希望」が「確信」に変わるような、そんなきっかけをつくれたらと思っています。
私自身も、当院で先に認定看護師になった先輩方の背中を見て、「自分も頑張ってみたい」と思いました。先を行く先輩方は、道を切り開くのに大変だったと思うんです。そのおかげで、私の時には、道筋ができていて、頑張って追いかけていくことができました。
今度は私が、後輩たちにとってそういう存在になれたらいいなと思います。
