臨床検査科のご案内

当院では、臨床検査技師が、検体検査、生理機能検査、病理検査、細菌検査と、内視鏡補助・採血・NST(栄養サポート)・ICT(感染制御)・治験・臨床研究などの臨床支援業務を幅広く行っています。
安心・安全な検査を行うことはもちろん、正確な検査結果を迅速に提出することで医師の診断をサポートし、質の高い医療と患者さんへのよりよいサービスを心がけ、臨床検査科スタッフ一同で努めています。

採血・採尿検査をされる患者さんへ

診療に必要な検査で使用した血液や尿について、教育・研究・精度管理を目的として使用させていただく場合があります。
ただし、診療上必要とされる量以上の採取をすることはいたしません。
また、使用に際しては、患者さんの氏名や身元などの情報が明らかになることは、一切ありません。
ご了承いただけない場合は、検査時にお声がけください(お申し出がない場合は、ご了承いただけたものとさせていただきます)。
ご不明な点、疑問等がありましたら採血・採尿検査室へお声がけください。

ISO15189の取得について

臨床検査科は、2018年11月に臨床検査室の国際標準規格であるISO15189:2012を取得いたしました。
ISO15189とは、臨床検査室の品質と能力に関する要求事項を提供するものとして国際標準化機構(ISO)が定めた臨床検査に特化した国際規格です。
これからも、患者さんが安心して質の高い検査を受けていただけるよう、継続して努めてまいります。

認定施設・認定資格

認定施設

  • 日本臨床細胞学会施設認定
  • 日本臨床細胞学会教育研修施設
  • 日本病理学会認定病院
  • 日本病理学会研修認定施設
  • 認定臨床微生物検査技師制度研修施設
  • 精度保証施設

認定資格(2025年4月現在)

認定資格名称 人数
細胞検査士 7名
国際細胞検査士 5名
超音波検査士 6名
認定臨床微生物検査技師 1名
感染制御認定
臨床微生物検査技師
1名
血管診療技師 3名
日本糖尿病療養指導士 1名
認定輸血検査技師 2名
認定血液検査技師 2名
認定骨髄検査技師 1名
認定救急検査技師 2名
認定臨床化学・免疫化学精度保証管理検査技師 2名
認定一般検査技師 1名
緊急臨床検査士 5名
二級臨床検査士(各部門) 18名
医療環境管理士 1名
健康食品管理士 1名
認定心電検査技師
(JHRS認定心電図専門士を含む)
2名
認定資格名称 人数
心電図検定1級 3名
心電図検定2級 2名
心電図検定3級 2名
心電図検定4級 3名
認定病理検査技師 2名
日本臨床神経生理学会認定技術士 2名
POCT測定認定士 2名
埼玉県肝炎医療コーディネーター 2名
認定認知症領域検査技師 1名
認知症予防専門臨床検査技師 5名
有機溶剤作業主任者 3名
第一種衛生管理者 3名
毒物劇物取扱者(一般) 1名
危険物取扱者(乙種4類) 1名
医療安全管理者 1名
がんゲノム医療コーディネーター 4名
消化器内視鏡認定技師 1名

検査について

血液検査(中央採血室)

採血の流れ

  1. 受付にて受付案内票を提出してください。
    整理番号をお渡しします。
    検査の内容により、順番が前後することがあります。
  2. パネルに番号が表示されましたら、採血室の中へ入り、上着などを脱いでお待ちください。
  3. 採血後は、綿の上から10~15分ほど押さえてください。
採血を受ける方へのお願い

以下に該当する方は、採血前にスタッフへお声がけください。

  • 採血してはいけない腕がある方
  • アルコール・テープでかぶれやかゆみを起こしたことがある方
  • 採血で気分の悪くなったことがある方

中央採血室での取り組み

中央採血室では、1日に250〜350人の採血を行っています。
受付でお預かりした受付案内票をカードリーダーに読み込ませると、患者さんの検査内容が自動採血管準備装置に送られます。この装置で採血管を自動選択して検体バーコードラベルを貼り付けの間違いなどを防止しています。
また、患者さんの取り違えがおきないように、採血の前には患者さんご自身でお名前を言っていただきますので、ご協力をお願いいたします。

検査の内容

血液検査

<血球数算定>
血液中にある赤血球、血小板、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、網赤血球などを全自動血球分析装置で測定します。
また、白血球は5種類(好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球)に分類、測定します。

<形態検査>
血液の標本を作成して、顕微鏡で白血球の細胞分類や赤血球、血小板の形態を観察します。
これらの検査は貧血や血液疾患の診断、その他各種疾患の診断補助となります。

好中球
好酸球
好塩基球
リンパ球
単球
血小板

<凝固検査>
血液を凝固させる物質を検査します。
抗凝固作用をもつ薬剤のコントロールなどに用いられます。

<骨髄穿刺検査>
骨髄穿刺を行い、胸骨や腸骨より採取した骨髄穿刺液の細胞分類や算定をし、骨髄の造血機能の異常や血液疾患、腫瘍細胞の転移などを知ることができます。

生化学検査

採血した血液から、遠心機を用いて分離させた血清成分を使用して検査します。
血清中には水分のほかに、たんぱく質や脂質、糖質、ミネラル(無機物)などの生命を維持するために必要な成分や、体内で不要になった老廃物も含まれています。
これらの成分が、体内にどのくらいあるかの濃度測定を行う検査です。

免疫血清検査

<感染検査>
B型肝炎やC型肝炎・HIV・梅毒などの、感染の有無を調べる検査です。

<腫瘍マーカー検査>
腫瘍細胞が存在すると特異的に増加する「腫瘍マーカー」といわれるものを調べる検査です。

<ホルモン検査>
ごく微量で、体の健康維持のためいろいろな機能を調節する働きがある、ホルモンを調べる検査です。

輸血検査

輸血は、出血や病気あるいは治療により減少した血液成分を補うために行なう重要な治療法です。

使われる血液には、あらかじめ患者さん自身から採血する「自己血」と、献血で作られた「輸血用血液製剤」があります。輸血用血液製剤の安全性は高いものとなりましたが、副作用を起こす可能性もあります。
輸血を受けるにあたり、医師から患者さんまたはご家族に対して十分に説明を行い、理解し同意を得た上で行います。

輸血部門は、安全で適正な輸血を実施するため24時間体制で検査対応しています。また、薬事法に従い、血液製剤の使用したことの記録を20年間保存します。ご了承ください。

輸血に関する検査

  1. 血液型検査
    ABO式・Rh式血液型は輸血時には重要な検査です。
  2. 不規則抗体検査
    不規則抗体は、妊娠歴や輸血歴のある人から検出されます。
    抗体の有無を事前に確認することで、安全な輸血や血液製剤の確保に大変重要です。
    また、妊婦さんが抗体を持っていると抗体の種類によって、赤ちゃんの血液が壊されること(新生児溶血疾患)がありますので、早めに件検査しておく必要があります。
  3. 交差適合試験
    輸血をうける患者さんが、血液製剤と適合するか確認する検査で、副作用を防止するために行ないます。
  4. その他
    直接クームス試験、間接クームス試験など

<製剤の管理>
血液製剤、自己血を専用の保冷庫とフリーザーで適正な温度で保管します。

<自己血>
輸血用血液製剤に伴う副作用を回避する目的で行なわれます。
当院では貯血式自己血輸血を行なっています。
対象者は採血基準をもとに術前状態が良好で待機手術の方に限られます。
採血は、医師、看護師、臨床検査技師がチームで協力して行ないます。

赤血球液-LR
[A型Rh(+)]
新鮮凍結血漿-LR
[A型Rh(+)]
濃厚血漿板-LR
[A型Rh(+)]
自己血

輸血を受けた患者さんへ

輸血に用いる血液製剤は、日本赤十字社が感染症等の必要な検査を行なっており、安全性の確保に努めています。
しかしながら、検査には限界があり、まれに肝炎ウイルスおよびHIVに感染する可能性があります。このため輸血を受けた2〜3か月後に、感染症の有無を確認する血液検査をおすすめしています。
輸血による感染と判明した場合は「生物由来製品感染等被害救済制度」による給付を受けることができます。

  • 入院中の患者さんは、退院の際に診察予約を入れることをお勧めします。
  • 当院にて受診できない場合は、最寄りの病院で検査を受けて下さい。
  • 輸血を受けて2〜3か月後は、検査費用が保険適応となっておりますので期間内の受診をお願い致します。

【 検査項目 】(輸血療法の実施に関する指針)
B型肝炎ウイルス:HBV-DNA (PCR)
C型肝炎ウイルス:HCVコア蛋白またはHCVコア抗原
エイズウイルス抗体:HIV抗体

一般・その他検査

血液以外の尿・糞便・体腔液(髄液、関節液)を調べます。
尿や便の検査は、採取で身体に負担をかけずに検査をすることができます。

髄液・関節液・精液などそれ以外の検体を含め、どんな検査をしているのか紹介します。

尿検査

腎臓で作られ、尿管、ぼうこう、尿道を経て体外に排出されるので、腎臓や泌尿器系臓器の状態が分かります。
定性検査として、尿にどんな物質が含まれているのかを調べています。
全自動分析装置によって、尿検査の定性・半定量を行っています。

<定性検査の主な測定項目と、陽性の場合の疾患>

蛋白 腎疾患
ブドウ糖 腎糖尿病
ケトン体 重症糖尿病などケトーシスを起したとき
ビリルビン・ウロビリノーゲン 肝障害
潜血(尿中赤血球) 尿路結石、膀胱腫瘍、糸球体腎炎など
白血球・亜硝酸塩 尿路感染症

尿沈渣

尿を遠心分離器にかけて、沈澱した成分を顕微鏡で調べる方法と、自動分析機で調べる方法を組み合わせて行っています。

ダニ
脂肪円柱
フィブリン円柱
ショウ酸カルシウム結晶

髄液検査

髄液とは脳室や脊髄の隙間を満たしている液で、中枢神経を守り、恒常性も保っています。
髄膜炎・脳炎の早期治療に欠かせない検査で、細菌性髄膜炎かウィルス性髄膜炎かの推定に役立ちます。
稀ですが、血液系腫瘍や上皮系腫瘍が診断されることもあります。

<関節液検査>
関節液は、関節腔を満たし、衝撃を吸収したり、軟骨への栄養補給をしたりしています。
関節炎の原因を診断するため、尿酸ナトリウム結晶(痛風)かピロリン酸カルシウム結晶(偽痛風)を鑑別します。

便検査

便検査には主に2種類あり、消化管からの出血を調べる便潜血検査と、便の中に寄生虫がいないかを調べる検査があります。

<便潜血検査>
ヒトヘモグロビンの抗原抗体反応を利用する免疫法を用いた、全自動分析装置で検査しています。
下部消化管には有効ですが、上部消化管では変性して陰性になることがあります。

<寄生虫検査>
顕微鏡で観察する検査です。

寄生虫
便潜血検査の注意事項
  • 2日間別々の日に分けて2回採取します。
  • 便の表面をまんべんなくこするようにして採ります。
  • 採取する量は、スティックの先端の溝に埋まる程度。
  • 採便後は冷暗所(冷蔵庫など)で保管します。
  • 生理中の採取は避けましょう(生理後2~3日後に採取)。
生理機能検査

心電図検査(標準12誘導心電図・運動負荷心電図・ホルター心電図・イベント心電図)、呼吸機能検査、動脈硬化検査(CAVI)、脳波検査、超音波検査(心臓・腹部・乳腺・甲状腺・頸動脈・下肢静脈・産婦人科領域)の検査を行っています。

心電図検査

心臓の筋肉が活動する際に生じる電気変化を記録するもので、脈の乱れ、胸の痛み、動悸、呼吸困難、失神などの症状や、原因不明のショックといった場合の診断のために行う検査です。
また、手術の前にも行われます。

呼吸機能検査

肺の大きさや、肺の働きを調べるための検査です。
口で息をしていただくだけなので、痛いとか苦しいというようなことはあまりありませんが、できるだけいっぱいに大きく息を吸い込んだり、吐き出したりしていただきます。
慢性的な呼吸器疾患の重症度、大きな手術の前や、術後の経過をみます。

脳波検査

頭皮上から、脳(主に大脳)の活動状態を記録するものです。
脳の活動状態とは、普通の生活をしているときの脳の働き具合をいいます。
てんかんの評価、外傷による脳のダメージの評価ができます。

超音波検査

人には聞こえない高い音(超音波)を利用して画像を映し出し、心臓の動きや胆のう・肝臓の腫瘍などを調べる検査です。弱い音波を使っているため、人体への影響はまったくありませんので、繰り返し検査が可能です。

細菌検査

感染症を起こしている病原微生物を、検体から顕微鏡や培養検査をして見つけます。また、治療に効果のある薬を確認する検査もしています。

調べる検体は痰(たん)、尿、便、うみ、血液など、患者さんの症状によりさまざまです。
採取した検体から発見される細菌には、ブドウ球菌、肺炎球菌、溶連菌、病原性大腸菌O157、サルモネラ菌、コレラ菌、結核菌など、100種類以上あって、発見した菌がどの菌なのかを特定するためには、確かな知識と技術が必要です。
また、新型コロナウイルスの遺伝子検査も行っています。

細菌検査機器

当院は認定臨床微生物検査技師、感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)が検査を担当しており、認定臨床微生物検査技師制度研修施設として認定されています。

病理検査

スタッフ

常勤病理医3名、非常勤病理医2名、常勤検査技師8名、非常勤技師1名

病理診断

病理医と臨床検査技師が協力しながら、手術で取りだした臓器や、内視鏡で採取した組織を顕微鏡下で観察し、病変や腫瘍の有無などを判断して、病理診断書を作成します。
近年、病理検査は従来の顕微鏡検査だけでなく、分子病理学的検査(DNAやRNAを対象とした解析)といった先端技術が導入されています。『がんゲノム医療』の発展により、病理検体を用いて、分子レベルでの特徴を調べる検査が行われています。

細胞診検査

尿や痰(たん)などの検体、乳房や子宮から採取された検体中に、感染症やがん細胞があるかどうかを検索する検査です。
臨床検査技師の中でも細胞検査士という資格を持った者が行います。

検査実績

  2022年度 2023年度 2024年度
組織件数 5,973 件 5,481 件 5,642 件
術中迅速組織件数 244 件 235 件 220 件
細胞診件数 8,861 件 9,330 件 9,077 件
包理
薄切
術中迅速
組織診
細胞診
遺伝子検査システム
自動免疫染色装置