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眼科「糖尿病網膜症」

糖尿病網膜症

糖尿病の影響が眼におよぶ場合があります。その影響は、おもに網膜に現れ、「糖尿病網膜症」と呼ばれます。
眼球の構造はしばしばカメラに例えられます。「網膜」はカメラでいうところのフィルムに当たり、眼の奥(内側)にある組織です。そのため、鏡などで外側から眼の様子を見ても、網膜の状況をうか がい知ることはできません。したがって、眼科での精密検査を受けずにして、糖尿病網膜症を(早期)発見することは困難です。

糖尿病網膜症による失明を防ぐためには、早期発見がとても大切です。しかし、例えば眼底出血があったとしても「かすみ」などの自覚症状が出ない場合が多いため、知らず知らずの間に網膜症が進行している場合があり、注意が必要です。また、糖尿病を罹患してからの期間が長い方や、血糖値のコントロールが悪い方では、糖尿病網膜症の発症リスクがより高まります。


正常の眼底



糖尿病網膜症の眼底

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症に対して、眼科で治療を行ううえで最も大切なことは、「治療すべき適切なタイミングを逃さないこと」です。
例えば、「かすむ」、「見えにくい」などの症状がなくても、糖尿病網膜症が進行している場合、網膜光凝固(レーザー治療)が必要となります。病気の勢いを抑え、将来的な失明を予防することがレーザー治療の目的です。
治療すべき適切なタイミングを決定するために、網膜血流を正確に把握する検査器機として、当院には「蛍光眼底造影検査」および「OCTアンギオグラフィー」があります。OCTアンギオグラフィーにて造影剤を使うことなく検査することができます。それらの器機を活用することで、「適切なタイミング」を逃すことなく、レーザー治療を計画することができます。
一方で、「かすむ」、「見えにくい」などの症状がすでに出ている場合は、糖尿病網膜症がすでに進行し、悪い状態になっているケースが多く、さらに踏み込んだ手術等での治療が必要となることもあります。

糖尿病網膜症によって視力が低下する病態の例

  • 網膜剥離(網膜が引っ張られて剥がれる)
  • 硝子体出血(眼の中にあるゼリー状の組織(硝子体)に出血をおこす)
  • 血管新生緑内障(眼圧が上がり、視神経が障害される)
  • 糖尿病黄斑浮腫(網膜の中心部の「黄斑」に水がたまる)

ただし、糖尿病に罹患しても、すぐにこれらの悪い病態がおきるわけではありません。これらの状態になる以前に、適切な治療をすることで糖尿病が原因となる失明を防ぐことができます。したがって、 内科の医師から糖尿病を指摘されている患者さんにおかれましては、眼科での検査が大切になります。

ゆがみの原因と

糖尿病と診断を受けている患者さんの中で、「ゆがみ」「かすみ」の症状がある場合、「糖尿病黄斑浮腫」に注意が必要です。
糖尿病黄斑浮腫とは、網膜の中心にある「黄斑」という部位に浮腫(水ぶくれ)が起こった状態です。
黄斑の形状を正確に把握する画像検査として、「光干渉断層計(OCT)」という検査器機が有用です。短時間かつ、患者さんの眼に負担をかけることなく黄斑部を撮影し、評価することができます。

正常な黄斑(OCT画像)

糖尿病黄斑浮腫(OCT画像)

抗血管内皮増殖因子(VEGF)製剤の硝子体注射

糖尿病黄斑浮腫の治療として、「抗血管内皮増殖因子(VEGF)製剤の硝子体注射」があります。点眼による麻酔をしてから、直接眼内に薬剤を注射する治療です。
抗VEGF製剤硝子体注射によって、糖尿病黄斑浮腫がだいぶ抑えられるようになってきました。
当院でもこの治療を行っております。また、この治療法は「加齢黄斑変性」や「網膜静脈閉塞症」という疾患に対しても行われています。