手荒れ
コロナ禍ですので、感染防止のために手洗いは必要です。ですが、過剰な手洗いは「手荒れ」の原因になります。
皮膚のバリア機能が正常な場合は、手洗いによって雑菌がクリアになり一定の時間続きますが、手荒れを起こしていると、手をきれいに洗っても5分後にはまた雑菌だらけになってしまいます。
手荒れは感染リスクが上がってしまうのです。
界面活性剤
手洗いに必要な洗剤(石鹸)には、界面活性剤が含まれます。
界面活性剤の大きな特徴は「汚れを落とす」こと。水だけではなかなか落ちない汚れを落とすために界面活性剤を活用します。ですが、汚れを落とすと同時に、過剰に洗いすぎると皮膚に必要な皮脂までからめとってしまい、皮膚のバリアが破綻してしまいます。また、洗いすぎは角質がふやけます。すると、表皮内の水分を蒸発させてしまい、皮膚はどんどん乾燥してしまいます。
乾燥は大敵!
角質層が乾燥している状態になるとバリアが破綻している状態となり、いろんな刺激が入ってきやすくなります。また、神経が伸びてきてかゆみを起こすこともあります。
正常であれば水分が表皮内に含まれパックされている状態ですが、バリアが破綻していると、どんどん水分が蒸散してしまい、さらに悪循環を招きます。
手荒れは感染対策がムダになる?
バリアが破綻した箇所からウイルスや細菌といった微生物も入ってくるので結局、何度洗ってもこの微生物が取り除けない。それどころか、荒れることによってますます微生物が皮膚の中に入っていくということが生じてしまうわけです。
感染対策はもちろん大切です。ですが、手荒れ防止もしないと、せっかくの感染対策がムダになってしまいます。私たち医療者も同様ですが、感染対策をしながら手荒れ対策も行いましょう。
スキンケアで正常な皮膚を保ちましょう
手洗いを見直そう!
- 水を含ませてよく泡立てることで、界面活性剤の濃度を低くすることができます。
- よく泡を立てると洗い残しが少なく、角質層との摩擦を軽減することができます。
- きめ細かい泡ほど汚れがよくとれます。
- 水分をよく拭いて乾燥をふせぎましょう。
不足したバリア因子を補おう!
失った水分を取り戻すには、
- 使い心地のよい保湿クリームなどをたっぷりつかいましょう。
- こまめにつかう。
- バリアクリームも活用すとよいです。
※バリアクリームって何?:皮膚を刺激から守り保護するクリームです。手洗いをしたあと、作業前や作業中に塗ります。
つよい味方!“保湿剤”
保湿に使える外用薬は、ローションやクリーム、軟膏など、そして病院で処方してもらえるものから市販で買えるものまでたくさんの種類があります。
いわゆる“軟膏”は、しっかりと皮膚にくっついて刺激から守る役割があり、“クリーム”は、すっと伸びて使い心地がよいという特徴があります。
自分に合っていて、毎日使えるものを選ぶことと、必要な量をしっかり塗ることが大切です。
クリームの量はどのくらい?
▶ 1TUF=人差し指の第一関節分ぐらいです。
- 両手のひら=1TUF
- 両手全体=2TUF
- 両腕=8TUF
- 体全体=40TUF
塗り方は?
塗りたい箇所にいくつかに分けてクリームを置きます。そして、皮膚の溝にそって優しく押し込むようなイメージで塗り広げます。
皮膚は体を守る鎧のような役割を果たしています。皮膚が健康でないと、さまざまなトラブルが続発してきます。
感染対策として手洗いが大切なこの時期。また、寒くなってくると皮膚も乾燥しがちです。手荒れなど起こしていませんか?
皮膚について、正しい知識とスキンケアを学びましょう!
皮膚科 高山 かおる
院外報「済生かわぐちVol.244」(2021.10発行)掲載