患者さんを中心とした医療の質の向上をめざします

けんこうマガジン

慢性腎臓病の世界的な蔓延が始まった!

2018年6月12日に米国腎臓学会から出されたプレスリリースはショッキングなものでした。「The hidden epidemic(密かな蔓延):全世界で8億5000万人もの人が腎臓病に侵されている」というものです。腎臓病はコロナやインフルエンザのような感染症ではありませんが、高齢化や生活習慣病の罹患率増加により、患者数が確実に増加しています。そして多くの患者は、自らが腎臓病であることに気づいていません。

そもそも腎臓は何をしている?

「腎臓は何をしているの?」と聞かれれば、多くの人は「尿を作っている」と答えられるものの、「尿はどうやって作られるの?」と聞かれて答えられる人はほとんどいないでしょう。
腎臓のもっとも大事な機能は血液の濾過であり、その濾過フィルターは「糸球体」と呼ばれる細い動脈の塊です。この装置が左右の腎臓に合わせて150万~200万個あり、細動脈の壁から浸み出す原尿が、1日100リットルあまり生成されます。
老廃物を体外に排泄する一方で、原尿の99%は必要に応じて尿細管で回収され、最終的に1日1リットル程度の尿が排出されます。
また、原尿を再吸収する過程で体内の塩分・水分量の調整、体液の酸性度の調節を行い、体内環境が維持される仕組みです。
さらに腎臓には、血圧を調節するホルモンや、造血ホルモンの分泌、骨代謝に関係するビタミンDを活性化する働きもあります。

クリックすると拡大してご確認いただけます。

クリックすると拡大してご確認いただけます。

慢性腎臓病(CKD)とは?

慢性腎臓病とは、蛋白尿や腎機能低下が慢性的に続く状態のことです。Chronic Kidney Diseaseの頭文字をとり、「CKD」とも言います。
蛋白尿や腎機能低下をきたす疾患はさまざまで、糖尿病・高血圧・脂質異常症といった生活習慣病や、慢性糸球体腎炎、そのほかに多発性嚢胞腎、膠原病、血管炎などがあります。
原疾患を特定するためには通常腎臓の組織検査が必要で、原疾患が確定すれば、疾患ごとに治療プランが立てられます。しかし、入院して組織検査をすることが困難な場合や、組織診断をしても特別な治療がない場合(生活習慣病による腎障害の多くが該当します)には、原疾患にとらわれずに、大きなくくりで腎臓病を捉えることが重要となります。これが慢性腎臓病の考え方です。

慢性腎臓病の診断


下記1か2のいずれか、または両方が3カ月以上持続した状態

  1. 腎障害の存在が明らか
    ・病理学的診断
    ・腎障害マーカー(血液・尿検査または画像診断)
    特に蛋白尿の存在が重要
  2. 糸球体濾過値 GFR
    <60ml/min/1.73m2

(厚生労働省 平成29 年患者調査の概況より)

慢性腎臓病は最も患者数の多い生活習慣病

慢性腎臓病の患者数は、成人人口の13%と言われ、それは、厚生労働省の推計による主要な生活習慣病の患者数を上回る可能性もあります。また、埼玉県南部地区(川口・蕨・戸田市)で推計すると、8.7万人もの患者がいると考えられます。
その中で専門医の外来に定期的に通院しているのはごく一部で、多くの方は腎臓の異常に気づいていないか、あまり重大な異常とは考えていないのです。腎機能が少々悪化しても、自覚症状はあまりないことが多く、気づいた時にはもう手遅れ、ということになります。そうならないためには、毎年必ず健康診断を受けることが重要で、慢性腎臓病が疑われたら、健診担当医の指示に従い、必要であれば腎臓専門医の外来を受診しましょう。

生活習慣病患者の人数


  • 高血圧 993 万人
  • 糖尿病 328 万人
  • 脂質異常症 220万人
  • 心疾患(高血圧性を除く) 173 万人
  • 脳血管疾患 111万人
  • 慢性腎臓病 39.3 万人
    ※しかし、未受診の患者を含めると、慢性腎臓病の患者数は1330 万人と言われており、生活習慣病の中で一番多い可能性もある。

(厚生労働省 平成29 年患者調査の概況より)

慢性腎臓病の重症度分類

慢性腎臓病の重症度は、腎機能と蛋白尿の量とで分類され、分類表の中で色分けされます(ヒートマップ)。
赤く塗られた分類に相当する患者は、末期腎不全に移行する可能性や、心臓・脳血管の疾患を合併するリスクが高いことを意味しています。
腎機能は、採血結果から計算された糸球体濾過値(eGFR)によりG1~G5に分類され、尿蛋白量は、A1(蛋白尿なし)、A2(軽度蛋白尿)、A3(高度蛋白尿)の3段階に分類されます。
腎機能でG3b以上(eGFR45未満)、蛋白尿でA3以上(+1以上)であれば、腎臓専門医の外来受診が必要です。

クリックすると拡大してご確認いただけます。

※重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。CKDの重症度は死亡、末期腎不全、心血管死亡発症のリスクを緑のステージを基準に、黄色、オレンジ、赤の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する。

(日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」より)

慢性腎臓病の治療

慢性腎臓病の基本的な治療を支えるのは、①生活習慣の改善、②食事療法、③投薬治療を主体とした血圧・血糖・脂質の管理、の3本柱です。

  1. 生活習慣では、禁煙と、適度な運動を取り入れた体重管理が重要です。
  2. 食事で一番重要なのが塩分制限で、蛋白質やカリウムの摂取制限が病状に応じて加わります。
    副食には塩分・蛋白質が多く含まれるため、副食の割合を減らし、主食を必ず摂ること、さらに水分を充分摂ることが必要となります。
  3. 血圧・血糖・脂質の管理も重要です。腎機能に応じた薬剤選択が必要であり、専門医の指示に従いましょう。

クリックすると拡大してご確認いただけます。

(慢性腎臓病 生活・食事指導マニュアル~栄養指導実践編2015年より)



腎臓内科 窪田 研二
院外報「済生かわぐちVol.234」(2020.03発行)掲載