患者さんを中心とした医療の質の向上をめざします

血管外科

血管外科 特長

動脈・静脈すべての脈管疾患を診療対象にし、高いレベルの医療を安心して受けられるように努力しております。

主な対象疾患

下肢閉塞性動脈硬化症、動脈瘤、下肢静脈瘤、シャントトラブル

下肢閉塞性動脈硬化症(LEAD)について

主に足(下肢)の動脈に動脈硬化が起こり、狭くなるか詰まるかして、足を流れる血液が不足し、それによって痛みを伴う歩行障害が起きる血管病です。
重症の患者さんは、足を切断しなければならない場合もありますからあなどれません。
下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんは、70歳以上になると約20%に達するといわれ高齢者に多い血管病です。多くの方が罹患する可能性があり、70歳以上の5人に1人がこの病気の可能性があります。
この病気は、5年の経過で約20%が歩行障害(跛行)の悪化、約10%が足の動脈の血液不足が深刻になる「重症下肢虚血」となるものの、足の切断にまで至るのは数%で、予後は比較的よいようにも思えます。
しかし、他の動脈疾患(冠動脈疾患:約50%、脳血管疾患:約20%)を合併する可能性があるため、下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんは、5年後には約20%が心臓や脳の血管疾患を発症し、このことが原因で約15%が死に至るといわれていますから、軽くみるのは禁物です。

下肢閉塞性動脈硬化症の治療

治療は、禁煙・運動療法・薬物療法・カテーテル治療・バイパス手術があります。
病状により治療法が違います、脚が冷たい・歩くと痛いといった症状がある方はぜひ、診察を受けてください。

下肢閉塞性動脈硬化症の症状(Fontaine分類)

1度 無症状
冷感・しびれ
足先がしびれる
冷たく感じる

2度 間歇性破行
一定距離を歩くと筋肉の
痛み・ひきつりを感じて
歩けなくなる。
休息すると回復し、
再び歩くことができる。

3度 安静時痛
夜間などに足が
強く痛む。

4度 潰瘍・壊死
見た目にも明らかに
異常が現れる。

下肢閉塞性動脈硬化症
~足の血行障害から足を救う~

動脈瘤について

動脈瘤とは全身に血液を運ぶ動脈が瘤状に大きくなったものです。動脈瘤の多くは破裂しない限り症状はありませんが破裂すると死亡率は80〜90%になるといわれています。
いったん動脈瘤ができると自然に縮小することはなく、有効な薬物治療もありません。そのため、動脈瘤は破裂するまえに治療することが原則ですので、早期発見と早期治療が大切です。
動脈瘤は動脈硬化により血管のしなやかさがなくなることで発生しますので、動脈硬化の原因になるコレステロールが高いとか血圧が高い方はかかりつけの先生に診てもらいましょう。
大動脈瘤の治療法としては皮膚を大きく切開して動脈瘤を切除して、その代わりに人工血管を縫い付ける「人工血管置換術」が一般的でした。
最近では血管に細い管(カテーテル)を挿入して人工血管を患部に装着する「ステントグラフト内挿術」が始まっています。
ステントグラフトによる治療は、脚の付け根を4〜5㎝切開してカテーテルにて病変部位にステントグラフトを留置します。開腹や開胸手術より切開も小さく、所要時間も短いので身体にかかる負担が少ないのが特徴です。しかし、病変部位などによりステントグラフト内挿術が不可能なこともあります。動脈瘤の正確な状況をCT検査やMRI検査で確認し、人工血管置換術とステントグラフト内挿術の利点と問題点を検討し適切な治療法が選択されます。

足が凸凹している!? ―下肢静脈瘤について―

下肢静脈瘤とは?

下肢静脈瘤とは足の血管が膨らんで瘤の様になる病気です。良性の病気で治療を急がなくても歩けなることはありません。ただ、自然に治ったり、薬の内服で治ることはありません。また、足首周囲の皮膚が茶色に染まってしまった場合は色の改善は困難になるので、早めに一度受診していただくのが良いかと思います。

下肢静脈瘤の原因は?

全身の血液は、心臓から動脈を介して大切な臓器や組織に送られます。臓器や組織で使われた血液は、静脈を介して心臓に戻ってきます。つまり、静脈は血液を全身から汲み上げて心臓へ戻す役割をしています。
静脈には、血液が逆流しないための逆流防止弁がたくさん付いていて、普段は重力に負けないように、心臓に向かって下から上へ血液を汲み上げます。静脈は深部静脈と表在静脈の2つに大きく分けられ、深部静脈は体の深いところに、表在静脈は体の皮膚表面に存在します。静脈の役割のうち、9割は深部静脈が、残りの1割を表在静脈が担います。
下肢静脈はこの表在静脈の逆流防止弁が壊れて血液が滞り、静脈がこぶのように膨らんでしまう病気です。有病率は8〜9%とされ、約1000万人の患者さんがいると推定されています。

下肢静脈瘤の症状は?

下肢静脈瘤で受診される方の多くは、「見た目がボコボコしている」という症状で来院されます。他にも下肢のだるさや重量感を感じたり、腫れ、痛み、こむら返りが起こったりすることもあります。長期にわたってくると、色素沈着となり、さらにひどくなると潰瘍ができることもあります。
医学的には下肢静脈瘤の症状は大きく6つに分類されます。

下肢静脈瘤の治療は?

■圧迫療法
静脈瘤治療の最も基本的で重要な治療法のひとつです。弾性ストッキングを着用します。パンティストッキング型、ストッキング型、ハイソックス型、つま先のあるものとないものがあります。弾性ストッキングの圧迫圧(強さ)は足関節で20〜40㎜Hg がよいとされています。軽度の静脈瘤であれば、市販のサポートストッキングの着用でも悪化を防ぐことができます。一方で、この治療法はあくまで保存的加療であり悪化予防ですので、静脈瘤を根治することはできません。

■血管内焼灼術治療(レーザー、高周波)
かつては入院手術が必要でしたが、最近は日帰りで傷がほとんどない血管内焼灼術が主流になってきました。レーザーや高周波を使用し、弁が壊れてしまった静脈を血管の内側から焼いてしまう手術です。
当院ではレーザー機器を使用し、日帰り手術を行っています。痛み、キズがほとんどなく、体への負担も少ないため、若年の方から高齢の方まで幅広く受けることができます。現在、アメリカの学会では治療の第1選択肢とされています。

■ストリッピング手術
古くからあるスタンダードな手術方法です。足の付け根と膝の内側に数センチの皮膚切開をおき、そこから血管を引っ張り出してとってしまう手術です。現在でもレーザー治療の適応から外れてしまう方やその他多くの方が受けられています。当院では1泊2日で手術を受けることができます。
他の治療法に比べて体への負担が多少大きくなりますが、最も再発の少ない治療法といわれています。

■硬化療法
安価で外来でできる手術です。主にくもの巣状や残った静脈瘤、再発例などに使用します。点滴の管を入れ、特殊な薬剤(ポリドカノール)を注入することで静脈に攣縮を起こさせて硬めます。
近年新たに保険診療に加わったため、施設によって治療となる症例が違います。美容的な観点で用いられることが多いです。

当院では?

当院では上記の治療を患者さんの状態に合わせて組み合わせて行います。また、ご本人の傷を小さめにしたい、一度の処置でなるべく瘤を消したい、日帰りがよい、入院がよい、などのご希望に沿って治療計画を立てています。気になった場合はまずはお気軽に一度受診をお考えください。

学会認定施設

三学会構成心臓血管外科専門医認定機構基幹施設関連施設
日本脈管学会認定研修指定施設

National Clinical Databaseへの症例登録について

当院は、National Clinical Database(NCD)が行う、外科手術症例のデータベース化事業に参加しており、
血管外科および外科、泌尿器科においての手術症例を登録しています。
下記の「患者さんへ 専門医制度と連携したデータベース事業について」をご参照いただき、
NCDの趣旨、また当院のNCDへの参加についてご理解いただきますようお願いいたします。

※平成23年1月1日以降、血管外科および外科、泌尿器科において手術を受けるすべての患者さんが対象となります。
※NCDは日本外科学会を基盤とする外科系の学会が共同し、日本全国における外科手術に関する情報を
集計・分析することにより、医療の質向上に役立てることを目的としています。

●「患者さんへ 専門医制度と連携したデータベース事業について」
●National Clinical Database(NCD)ホームページ

Q&A

閉塞性動脈硬化症の治療法は、どんなものがありますか?
禁煙と運動、内服、カテーテル治療、バイパス手術があります。
閉塞性動脈硬化症と診断されましたが、とくに痛みはありません。痛みが出てくるまでは治療をしなくてもいいですか?
禁煙と運動はすぐに取り組んだ方が良いと思います。また、状況に応じて内服は始めた方が良い場合があります。
痛くはないのですが、足の血管がボコボコしていて見た目が気になります。治すには手術しないとダメですか?
血管のボコボコが静脈であれば静脈瘤です。浮腫んでいたり、皮膚に炎症があれば手術をおすすめしますが、すべてにすぐ手術が必要ではありません。ぜひ、専門医の診断を受けてください。

主な手術・治療・検査とその実績

手術実績

2022年度件数2023年度件数
腹部大動脈人工血管置換術21
ステントグラフト治療1419
末梢動脈外科的血行再建術2742
血管内治療2738
下肢静脈瘤手術2225
透析用シャント作成,関連手術125103
血管内治療206237
その他2014
合計443479
  2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度
動脈疾患手術(腹部大動脈・閉塞性動脈硬化症等) 27件 20件 25件 23件 23件 13件
PTA(カテーテルによる血管形成術)等 306件 363件 361件 369件 360件 336件
静脈瘤手術(抜去術、高位結さつ、硬化療法) 56件 35件 34件 23件 19件 12件
シャント手術 132件 124件 154件 142件 92件 100件

血管外科 スタッフ紹介

西山 綾子 (にしやま あやこ)

診療科 血管外科
役 職 主任部長
専門分野 血管外科一般 腹部・下肢動脈疾患 静脈疾患
資格・認定 日本外科学会認定 外科専門医
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構認定 心臓血管外科専門医
日本脈管学会認定 脈管専門医
下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医・指導医
腹部ステントグラフト実施医(AORFIX AAAステントグラフトシステム・ENDURANTステントグラフトシステムによる血管内治療実施医)
浅大腿動脈ステントグラフト実施医(GORE🄬 VIABAHN🄬 Endoprosthesisによる血管内治療実施医)

高坂 彩子 (たかさか あやこ)

診療科 血管外科
役 職 医長
専門分野 血管外科一般
資格・認定 日本外科学会認定 外科専門医
下肢静脈瘤に対する血管内治療実施基準による実施医
日本静脈瘤学会認定 弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

花田 和正 (はなだ かずまさ)

診療科 血管外科
役 職 医長
専門分野 血管外科一般
資格・認定 日本外科学会専門医
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構認定 心臓血管外科専門医
日本脈管学会専門医
腹部ステントグラフト実施医・指導医(Gore Excluder🄬 Endoprosthesis・ENDURANTステントグラフトシステムによる血管内治療)
日本血管外科学会血管内治療医
下肢静脈瘤に対する血管内治療実施医
浅大腿動脈ステントグラフト実施医(GORE🄬 VIABAHN🄬 Endoprosthesisによる血管内治療)
産業医